【サイバー完全兵器】 核兵器よりも怖い21世紀の「新型兵器」 。「AIによってサイバー戦が行われる時代」

『一期一会』

2021年05月15日 16:35

(1)世界では、すでに「サイバー戦争」が始まっている。「核兵器」と「サイバー兵器」の大きな違いから説き起こす。核兵器はその効果や危険性が周知となって、どの国も簡単には使えない。
(2)アメリカの「世界の脅威評価」の2007年版では、サイバー攻撃について一言も触れていない。その後の10年間で、国家による他国へのサイバー攻撃は200件を超えていると推計。当初は3、4か国にすぎなかった国も増えて、今や約30か国に膨れ上がった。「軍事戦争」には至っていないのに、特定の国家間ではサイバー空間で攻撃が行われ、防御に追われている。
(3)ロシアがアメリカの原発や送電線にマルウェアを忍び込ませる。あるいはウクライナで大規模な停電を引き起こす。イランがアメリカの金融機関に侵入する。北朝鮮がアメリカの銀行やハリウッド、イギリスの保険・医療システムに入り込み、各国中央銀行にサイバー窃盗を仕掛ける。
中国はアメリカ国民2200万人の私的情報を盗み出す。これらの一つ一つについて、攻撃側はとくだん「戦果」を吹聴しない。
(4)アメリカ自身が最大のサイバー大国。イランは地下で稼働する約1000基の遠心分離機が制御不能に陥った時にアメリカの関与を疑った。北朝鮮はミサイル発射の失敗が続いたときにアメリカを疑った。アメリカには総勢6000人を超えるサイバー工作部隊が存在する。
(5)北朝鮮のサイバー部隊について、「最初に手を出したのは」「パンドラの受信箱」「百ドルの屈辱」など13章に分けて現況を報告している。それぞれの章の中では、「プーチン直々の指示」「ロシアのハッキングはアメリカと同じ手口」「イラン核施設破壊作戦『オリンピック・ゲームズ』」「中国の大規模ハッキング『オーロラ作戦』」「各州選挙システムへロシア侵入の証拠」など、近年、何かと話題になった出来事が次々と登場。
(6)北朝鮮のサイバー部隊について、1998年にはサイバー攻撃部隊「121局」がつくられた。数学の成績が優秀な高校生は難関大学に集められ、英才教育を受けている。金正日も金正恩も、サイバー攻撃を重視しており、現在では6000人規模の要員を抱える。
(7)「見えない戦場」の中での戦い。本書では「サイバー戦」が過去のどのような「戦争」とも異なることを強調。兵器はサイバー技術。眼に見えない。誰がどこから攻撃しているのか、すぐには分からない。「ソニー・ピクチャーズ」の件でさえ、解明に苦労。それが、「チャンネル4」と同一犯だということの確定にはさらに時間が必要。
(8)仮に「犯人」が分かっても報復の方法がない。地上の戦闘とは大違い。核戦争なら直ちにミサイル発射地が特定され、仕掛けられた数十分後には反撃できる可能性があるが、サイバー攻撃の場合、サイバー技術の分析から、「犯人」の推定ができても、相手国は攻撃を認めないし、どこにどうやって反撃すればいいのか分からない。つまり人類の「戦争」の歴史の中で初めて「見えない戦場」の中での戦いを強いられている。
(9)とくにこの戦争で心配されているのが、「民間」への影響だ。電気、ガスなどのインフラが攻撃されると、都市機能はひとたまりもない。電話やインターネットも通じなくなり、あっというまに市民生活がマヒする。2015年にウクライナで起きたサイバー攻撃による「一斉停電」の恐怖が報告されている。「サイバー兵器」とは、21世紀に出現した「新型兵器」なのだ。本来なら「核兵器」と同じように、関係国による「管理」が望ましいのだろう。サイバー戦の参加国は、いずれも仮面をかぶったままだ。戦争に参加していることすら明かさない。サイバー戦の最大の特徴は、軍事的に劣勢にある国でも優位に立てるので「情報開示」や「管理」には応じないだろう。
核兵器よりも怖い21世紀の「新型兵器」
https://books.j-cast.com/2019/08/24009650.html








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